水道局員の悲劇

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これは友人の男性、吉田さんの体験談です。
某市の某水道局に公務員として吉田さんは勤務しています。
水道料金未納の人がいれば徴収にも行きますし、停水作業をすることもあるそうです。

水道局員はけっこうワイルドなお仕事です。
吉田さんは、あるアパートの水道料金未納者に督促状を送付しました。
督促状に相手からは何の返事もありません。
放っとくわけにもいきませんから、集金できれば幸いせめて支払いの約束を取り付けようと直接アパートにむかいました。

しかし残念なことに留守でした。
念のために表札で名前を確認しようとしましたが、表札がかかっていません。
水道料金未払い金額、名前や住所を記載したメモをポストに投函して吉田さんはアパートを後にします。

ここからが吉田さんのプチ不幸のはじまりでした。

数日たってもやはり水道料金未納者からの連絡はありません。
吉田さんは停水通知書片手にアパートを訪れましたがやはり留守でした。
再度念押しのため表札で名前を確認しようとしましたが、やはり表札はかかっていませんでした。

結局連絡がなかったので、最終手段の給水停止を実行するために吉田さんはアパートに足を運びました。
寒い冬です…木枯らしが吹いています。
こんな真冬に目的のアパートの玄関が開いています。

なんとなくいやーな予感がします。
吉田さんの予感はずばり的中しました。

「停水通知書入れたのはおまえかあ?」

吉田さんが玄関に近づくや否や、どうみてもただ者ではない人が玄関口に現れました。
真冬なのに上半身裸で背中には見事な龍の彫り物が…。

「まあ上がれ」

龍の彫り物の男性は吉田さんを一時間正座させました。
足がしびれて気絶しそうです。

実はこの見事な龍の彫り物の男性は、アパートの部屋に引っ越して間もなかったのです。
水道料金未払いのまま以前の住人が引っ越してしまったのですが、水道局内の顧客データがなぜか更新されていなかったのです。

いわれのないクレームをつけられたからには背中の龍が黙ってはいません。
龍の彫り物は今日という日を虎視眈眈と待っていたのでした。

「水道料金未払いという侮辱を受けた、よって慰謝料を払え」との要求に、吉田さんは「上司にきいていいですか?」と答えました。

吉田さんは解放され、今度は呼び出された上司が正座させられました。
上司は延々と恐喝され正座させられ…、吉田さんはプチ不幸でしたが上司は超不幸でした。

みなさん、仕事は確認につぐ確認をを心がけましょう。