おまえがうらやましい : MIHARUアラウンド(乾杯!)

おまえがうらやましい

すべて岡の言う通りだと美春は思った。
脚色のない表現で、本当は取り繕いたい美春の弱い部分を容赦なく指摘してくる。

「さすがに言いすぎだな、おれにそこまで言う権利はないな」
うつむいてうなだれる美春を横目に、岡は少し申し訳なさそうな顔をした。
「いいえ、おっしゃる通りです」

決して苛立ちや怒りからではなく、愛情あればこそここまで言ってくれている。
美春にだって岡の気持ちが痛いほど良くわかるのだ。
だけど正々堂々と顔を上げることができなくて、まだ美春はうつむいている。

何も言わずうつむくなんて、女の最後の手段のような、そんな甘えた態度を取る自分自身が情けなくて仕方ない。

気力をふり絞りなんとか美春は顔を上げた。
「人としてもっと成長します、約束します」
「だから…、見捨てないでください」
岡は困ったような顔をした。
「見捨てるって片桐おまえなあ…」
「おまえのバイトスタッフ時代からの仕事ぶりをずっと見てきて本社に引き上げたおれだぞ、ある意味戦友だと思ってきたんだ」
「正直寂しい、反面おまえがうらやましいよ」
「うらやましい…ですか?」岡の明け透けな発言に美春は戸惑った。

「乱暴にすら思えるほど、自分の信じたことに躊躇なく飛びこめるおまえのその性格だ」
ウエイターを呼んで、岡は焼酎ロックのおかわりを注文した。
「仕事人として、大人として、さっきも言った通り全肯定する気にはとてもなれないが…」
「なりふり構わずそこまで突き抜けられる迷いのない性格はある意味うらやましいよ」

「…そうですかあ?」
美春は本来の自分らしさを取り戻し始めた。
「一応ほめられているんでしょうけど”知的な女性”と対極のほめられかたですよね」
「なんか微妙な気持ちです…」
”肯定してやっただけありがたく思え!”岡はそう言って豪快に笑った。