30歳の誕生日 : MIHARUアラウンド(乾杯!)

30歳の誕生日

12月18日の火曜日、この日美春はとうとう30歳を迎えることとなった。

瀬戸バイヤーとの紆余曲折、天野と西条へのシンパシーと連帯感、岡マネージャーへの感謝と思慕の思い…。

― 昨日はあくる日過去となり、あくる日はまた未来を写し、あくる日が今日という日に重なっていく ―

つつがなく美春は仕事の引き継ぎを進めている。
そして少しづつ退職の日が近づいてくる。

仕事を定時で上がり、スーパーで食料品の買い出しをすると、美春はすぐさま麻生のマンションに向かった。
今月末で現在住んでいるアパートを引き払い、このマンションに引っ越す予定になっているが都合上、合い鍵だけは先にもらっていた。

マンションに到着すると美春はすぐに料理の準備をはじめた。
システムエンジニアという仕事柄、麻生はいつも多少の残業はある。
誕生日だから7時には必ず帰れるようにするとは言っていたが、あまり期待しないことにしている。
とにかく8時までに帰宅してくれれば万々歳だろう。
「外食もいいけど、ふたりで家ご飯の誕生日のほうが落ち着くね」そう意見が一致したので、美春は自分の誕生日のための食事の準備をすることになった。

現実問題、引っ越し間際の美春のアパートは段ボールの山に占領されている。
どうやってこんなに収納していたの?と質問したくなるくらいの荷物の山は、とてもじゃないが人の住み家と思えないありさまだ。
それでもまだ片付かないあわただしい状況の中、優雅に外食する気には到底なれなかった。
たとえ誕生日といえど落ち着かない。

美春はひき肉をこねてハンバーグを作った。
前回、麻生においしいと言ってもらえたことが素直にうれしかったから。
この前はデミグラスソースだったので、今日は醤油と大根おろしたっぷりの和風ハンバーグにしようと思っている。
品数を用意するために、優先順位を決めて手際よく調理していく必要がある。
ハンバーグの両面に焦げ目をつけて蒸している間に、美春はリズミカルに摺りがねで大根をおろした。