ドンぺリニョン : MIHARUアラウンド(乾杯!)

ドンぺリニョン

美味しそうな和風ハンバーグが完成した。
たっぷりすり下ろした大根おろしのソースもお好みでかけれるようばっちり準備してある。
ドンぺリニョンのコルクの栓が厳かに開けられ、用意されたクリスタルグラスに丁寧に注がれてゆく。
さすが天下のドンぺリニョン、パチパチと立ち昇る繊細な気泡が誕生日の気分をさらに高めてくれた。

すべてのセッティングを終えてふたりは乾杯をした。

「30歳の誕生日おめでとう、新しい仕事も頑張って、応援してるから」
「うん頑張る!」
麻生の励ましの言葉が嬉しくて、美春は返事に力を込めた。
そしてドンぺリニョンをひと口ふくむ。
「さすがにおいしい…どんどん入っちゃう、おかわりっ!」
美春は麻生にグラスを差し出した。
「おいおいこのボトルいくらすると思ってるんだ、そんな焼酎みたいにぽんぽんと…」
麻生は苦笑いしながらボトルにシャンパンを注ぐ。

人生の節目とも言える30歳の誕生日。
年齢を重ねていく切なさと、今までいろいろな事を乗り越えてきた感慨深さで心が昂ぶる。
経験したことのない未知数の世界にこれから突入していく自分。
来年からは響ナツコのアシスタントとして新しい環境がスタートするのだ。
武者震いとも言おうか、軽い緊張を伴って美春はテンションが上がっていく。

ハンバーグをぱくぱく食べながら、また麻生にシャンパンのお代りを催促した。
「おいおいもっと味わって飲んでくれよ高いんだから、ハイペースだなあ…」
麻生が軽く呆れている。

アルコールに強いふたりの手にかかると、一本のシャンパンボトルは20分を待たぬうちに飲み干されてしまう。
天下のドンぺリニョンといえどもそれは同じことだ。
コルクを開けてあっという間にボトルはほとんど空になってしまった。