転職への思いと退職の責任
フロアの他の社員はもうすでに退社していた。
美春は床につきそうな勢いでふたりに頭を下げた。
「本当にごめんなさい!」
「事前にふたりに伝えるのが筋だとはわかってるんですが時間がなかったの」
「だって…」
先日の日曜日の、響ナツコの個展での出来事を美春は説明し始めた。
『響ナツコ』の個展が圧倒的な素晴らしさであったこと。
来場している本人に直接会って、ますますファンになってしまったこと。
― 何よりも、ジュエリーの世界の可能性に開眼してしまったこと ―
「アパレルの仕事だって大好きです、『ナチュラリスト』にもとても愛着があります」
「でも、それを上回るほどジュエリー…いや響ナツコさんの世界に惹かれてしまったんです」
美春は天野と西条を真正面に見据えた。
「わたし、30代のこれからをジュエリーの仕事に賭けてみたいんです!」
天野と西条はただ黙っていた。
「何の相談もなく退職するなんて無責任だとわかっています」
「本当にごめんなさい!」
美春は再度深ぶかとふたりに頭を下げた。
天野と西条はじっと顔を見合わせた。
そしていきなり笑いだした。
「いやー本当に片桐さんらしいよ、ねっ西条さんそう思わない?」
「思う思う!」
天野の前振りに西条が答える。
「せっかく業績も上昇してきて、普通このタイミングで転職考えないよ、もったいないもん」
天野はまだ笑っている。
「やっぱり片桐さんは直情型だね、見ててはらはらするよ」
笑いはやがて微笑みに変わった。
「お互いこれからもがんばろう!違うフィールドになるけど応援してるから」
「退職後は『ナチュラリスト』の”顧客”として協力よろしくお願いします」
最後にそう言って天野は舌をだした。
ふたりの優しさに美春はさすがに涙目になった。
「任せてください!退職後も『ナチュラリスト』の良さを吹聴してまわりますから!」
― 美春と天野と西条 ―
働く女性として、3人は30代を駆け抜けていく。
これからもずっと縁が続けばどんなに素晴らしいだろう、この瞬間3人全員が心からそう思っていた。
美春は床につきそうな勢いでふたりに頭を下げた。
「本当にごめんなさい!」
「事前にふたりに伝えるのが筋だとはわかってるんですが時間がなかったの」
「だって…」
先日の日曜日の、響ナツコの個展での出来事を美春は説明し始めた。
『響ナツコ』の個展が圧倒的な素晴らしさであったこと。
来場している本人に直接会って、ますますファンになってしまったこと。
― 何よりも、ジュエリーの世界の可能性に開眼してしまったこと ―
「アパレルの仕事だって大好きです、『ナチュラリスト』にもとても愛着があります」
「でも、それを上回るほどジュエリー…いや響ナツコさんの世界に惹かれてしまったんです」
美春は天野と西条を真正面に見据えた。
「わたし、30代のこれからをジュエリーの仕事に賭けてみたいんです!」
天野と西条はただ黙っていた。
「何の相談もなく退職するなんて無責任だとわかっています」
「本当にごめんなさい!」
美春は再度深ぶかとふたりに頭を下げた。
天野と西条はじっと顔を見合わせた。
そしていきなり笑いだした。
「いやー本当に片桐さんらしいよ、ねっ西条さんそう思わない?」
「思う思う!」
天野の前振りに西条が答える。
「せっかく業績も上昇してきて、普通このタイミングで転職考えないよ、もったいないもん」
天野はまだ笑っている。
「やっぱり片桐さんは直情型だね、見ててはらはらするよ」
笑いはやがて微笑みに変わった。
「お互いこれからもがんばろう!違うフィールドになるけど応援してるから」
「退職後は『ナチュラリスト』の”顧客”として協力よろしくお願いします」
最後にそう言って天野は舌をだした。
ふたりの優しさに美春はさすがに涙目になった。
「任せてください!退職後も『ナチュラリスト』の良さを吹聴してまわりますから!」
― 美春と天野と西条 ―
働く女性として、3人は30代を駆け抜けていく。
これからもずっと縁が続けばどんなに素晴らしいだろう、この瞬間3人全員が心からそう思っていた。