日本ビーズアーティスト展覧会へ : MIHARUアラウンド(転換期)

日本ビーズアーティスト展覧会へ

ふたりは電車に乗って横浜高島屋にむかった。
がたごとと揺れる電車の窓からゆっくりと街の景色が流れて、のんびりとした気持ちになる。
スポーツ新聞を読んでいる人、子供のぐずる声、女の子どうしのしゃべり声。

美春はひとりの女性に”あっ”と目をとめて、麻生に耳打ちした。
「たぶんあの窓際の女の人、日本ビーズアーティスト展覧会に行くんだよ、つけてるアクセサリーが普通じゃないもん」
30代後半の女性にみえる。
かなりゴージャスなビーズネックレスを、装飾過多といえるほど身につけている。
麻生はますます不安な表情をつのらせた。
「…えっ、なにあの人、デヴィ婦人のまねしてるの?」
麻生の発言に美春は「ぷっ」と吹き出した。
麻生はそんな美春に憮然とした表情を作った。

電車が横浜駅に到着した。

ふたりは横浜高島屋にむかった。
日本ビーズアーティスト展覧会は6階の催事場で開催されている。
日曜日の百貨店は人であふれかえり、エレベーターに乗ることが容易ではなかったので、仕方なくふたりはエスカレーターで6階催事場にいくことに決めた。
アパレル会社のMDという仕事柄、美春は6階までの道中、リサーチに余念がなかった。
「へえ、今年はカラートレンチ着てる人がけっこういる」
「ほう、あのワンピースをこう着こなすかあ」
「うわあ、バレエシューズにすらグリッターカラーが出てるっ」
などなど、美春は先ほどからしきりにひとりごとを呟いている。  
反して麻生は、さらに”寡黙モード”に突入していた。
麻生の様子に、またもや美春は「ぷっ」と吹き出した。
麻生はつぶやいた。
「男って意外とセンシティブなんだよ…」

6階催事場に到着すると、催事場の入口周辺は開催初日ということもあり人でごった返していた。
案内状を拡大したポスターが会場入口付近にどんと飾られてる。
受付の女性に案内状を提示して、美春と麻生は中に入場した。

会場に一歩足を踏み入れると、そこは色の洪水だった。
300点以上のビーズや天然石アクセサリー、オブジェ、バッグなどが、ところ狭しと展示されている。
トルソーに飾られている作品もあればガラスケースの中に飾られている作品もある。
どの作品も絢爛豪華、技の極みといった趣で、美春の興奮はピークに達した。

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