暗雲立ちこめる販促会議 : MIHARUアラウンド(転換期)

暗雲立ちこめる販促会議

雲の流れがはやい。
遠くにたちこめる黒い雨雲が窓からみえる。
”暗雲がさす”とはまさにこのことだと自嘲しながら、会議などうわの空で美春は窓の外を眺めていた。

各店長の売上報告を、秋山商品部長が苦渋に満ちた表情で聞いている。
「10月はほんとうに惨敗だな…瀬戸バイヤー、原因はなんだと思う?」
秋山に促され、瀬戸バイヤーが分析を述べ始めた。
「まずは暖冬の影響があげられます、従来10月から重衣料が動き始めますが、皆さん買い控えの傾向がみられます」
「そして客単価が低いことも一要因です、セット売りや追加販売を強化すべきですね」
「商品レイアウトやボディを頻繁に変更して、同じ商品でも鮮度良く見せる工夫も必要です」
「追加販売強化のためにスタッフ研修を本社で行ったほうがいいかもしれませんね」

秋山は何かを思案しながら瀬戸の説明を聞いていた。
そして説明を一通り聞き終わるといきなり美春に矛先をむけた。
「片桐くん、きみはどう思う?」
「えっ!?は、はい」

会議にうわの空だった美春は、秋山の突然の質問に慌てた。
一息ついて落ち着くと「わたしの見解ですが」と意見を述べはじめた。
「11月になってだいぶ寒くなってきました、これから重衣料は動くと思います、だからここはひとまず安心です」
「問題はセールにかかるまでに残ってしまう中途半端なアイテム群ですよね」
「わたしはショップを経験しているので良くわかりますが、アイテムに統一性がないから追加販売もセット売りもしづらいんですよ」

秋山は”ほう”といった表情で美春の発言を聞いている。
美春の視線をちらりとかすめた瀬戸は、露骨に不快な感情を表わしていた。
「会議に来ている店長もそうですが、販売員の皆さんは当然セット売りや追加販売には努力していると思います、でも客単価が上がらない…」
「だとしたらここからは、販売力依存だけではなく、本社の努力が必要だと思うんです」

「片桐くん的になにか具体的なアイデアがあるの?」
美春の発言が愉快とばかり秋山は次の言葉を促した。

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