響ナツコの世界 : MIHARUアラウンド(転換期)

響ナツコの世界

「とりあえず、仕事で頑張ってる美春ちゃんをねぎらうということで…」
麻生が音頭を取り、ふたりはボジョレーヌーボーで再度乾杯をした。

白木のテーブルの上にたくさんの一品料理が運ばれた。
美春が差し入れたチーズにカンパチの刺身とポテトサラダ、エビフライ、にらの卵とじに、手羽元の醤油煮、そしてビーフシチュー。
「和と洋が入り交ざってなんか居酒屋さんのメニューみたい」
そう笑いながら”いただいまーす”と美春は料理に箸をつけた。
「とにかく作れる料理を並べたらこのメニューになってしまった」麻生は照れ笑いした。

麻生の手料理はなかなかおいしくて会話もはずんだ。
美春は現在の仕事の近況報告を交えながら次々と料理を口に運んだ。
「あっそういえば…」美春は思い出したようにバッグから一冊の本を取り出した。
今日の夕方に購入した、コスチュームジュエリー特集の本だった。
「この本に”響ナツコ”の特集ページが組まれていたの、12月2日から個展をやるんだって」
”へえー”と、言いながら麻生は特集ページに目を通している。
「この家パソコンある?WEBで作品を販売してるみたいだから、今見てみたいんだけど」
「あるよそっちの部屋に」

パソコンの電源を立ち上げて、美春と麻生は”響ナツコ”の公式サイトを確認した。
響ナツコのこれまでのプロフィールとともに彼女のこれまでの作品群が紹介されている。
― 響ナツコ 1969年、横浜生まれ。
某大手のジュエリー会社でブライダルジュエリーの企画に5年間携わる。
当初は18金などを使用したファインジュエリーをデザインしていたが、いつしか天然石の魅力に取り憑かれ独立を決意。
天然石を使ったノンセオリーの作風で、多くのファンを獲得している。
現在も精力的に製作活動を行っており、個展やワークショップなども定期的に開催している ―

「へえ、大手のジュエリー会社の企画からアーティストとして独立したんだあ」
WEBに掲載されている響ナツコの世界に美春はどんどん引き込まれていった。

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