溢れるくらいに天然石ジュエリー : MIHARUアラウンド(転換期)

溢れるくらいに天然石ジュエリー

はやる気持ちを抑えながら美春は会場を一巡した。

『日本ビーズアーティスト展覧会』では10点程度しか展示されていなかった響ナツコの作品がそこかしこにある。
おおぶりで大胆な作風を得意とする、彼女の作品がこれだけ展示されると圧巻のひと言だった。

「ホントに素敵…素敵すぎる…やばいよこのジュエリーたち…」
いつもWEB画面で眺めている響ナツコの天然石ジュエリーを目の前に美春はひれ伏した。
やはり本物は色感覚も立体感もさらにすごい!
造形美に溢れるそのジュエリーたちに美春は完全に恋してしまった。

ディスプレイがまたなんとも素敵なのだ。
パリの蚤の市で見つけてきたようなアンティークのトルソーに、琥珀のネックレスがさらりと飾られていたり。
敷詰められた砂や流木に、ターコイズや赤珊瑚のブレスレットがネィティブ感溢れて飾られている、といった具合だった。
会場内のBGMは”サティ”のピアノ作品集だ。
先ほどからサティの”ジムノぺディ”が静かに厳粛に流れている。

『響ナツコって作品だけでなく空間全体のセンスも抜群!』
アパレルのMDという仕事目線から見ても、響ナツコのセンスに美春はつくづく脱帽させられた。

あるコーナーの一画に人が殺到している。

いったい何ごと?とコーナーを覗いてみると『製作キット』が販売されていた。
個展に足を運んだファンの多くは、この製作キットの販売を目当てにしていたようだ。
響ナツコには熱狂的な信者のようなファンが多い。
ネット通販よりも1割引きで購入できる特典があるせいか、ほとんどの人が数点まとめ買いをしている。
「セット販売率と客単価アップだね」
…なんてつい商売的な発想をする自分に美春は苦笑してしまう。
そうは言いながらも美春は買う気満々だった。

完成品はひとつで10万円するものばかりなので簡単には手が出ない。
あれも欲しい、これも欲しい、いつもWEB画面を見つめ我慢している素敵な製作キットたち…。
1〜2万代の製作キットだって、響ナツコのデザインならば充分満足感を与えてくれる。
「1割引でも貴重よね、ボーナス一括でまとめ買いしよう」
美春は財布を握り占め、以前から狙っていた製作キットを次々と買い物かごに放り込んでいった。

BACK HOME  NEXT