商品部長秋山の采配 : MIHARUアラウンド(転換期)

商品部長秋山の采配

空が黒い雲に覆われ雨がぽつりぽつりと窓を叩きはじめた。

美春は秋山商品部長と対峙している。
岡マネージャーは組んだ手に顎を乗せて、美春の動向をじっとうかがっている。
西条も天野も、美春がまた地雷を踏まないかとはらはらした顔で心配している。

「クリスマス商戦が始まります」
そう一言述べると美春は自分の服装に視線を落とした。
「わたしは今日ヒョウ柄のラップスカートに、このじゃらっとした3連のネックレスをポイントにしています」
「アクセサリーひとつで洋服ってがらっとイメージを変えるんです、あるとないでは大違いです」

「そうだね、ヒョウ柄もネックレスもとても片桐くんの個性に似合ってるね」
意外にも秋山に褒められたので、美春は謙遜の表情を浮かべ言葉を続けた。
「ボーナスシーズンとクリスマスは稼ぎ時ですから、お客様に明確なアピールがあったほうが売りやすいと思います」
「まずは鮮度の高いアクセサリー、バッグを早急に仕入れて洋服とセット販売することでクリスマス商戦に便乗しましょう」
「クリスマスが終わっても単品で活用できることをアピールすれば『ナチュラリスト』でオールアイテム購入していただくことも可能だと思うんです」
「そうすれば客単価アップに繋がりますよね」
「せっかく商品企画部があるんですから、店頭在庫と組み合わせやすいアイテムを企画してもらってもいいんじゃないんですか?」
「結局セット販売に繋がりますよね、死に筋も動くから一石二鳥だと思うんですけど」

美春が提案を述べ終わると、秋山は天野に視線をむけた。
「商品企画の天野くんの視点から、片桐くんの提案はどう?」
天野は即答した。
「片桐さんの意見に賛成ですね、オリジナル衣料に力をいれて、来年のセールまでは死に筋の復活に尽力したほうがいいと思います」

秋山はしばらく考えたあと会議室全体を見渡した。

「わかった、その線で行こう」
秋山のその言葉に会議室がざわめいた。
瀬戸があっけにとられた表情で秋山の横顔を凝視している。
岡は先ほどからのポーズのまま、にやっと笑って美春を見た。

意見がまとまるや否や、秋山はてきぱきと采配をふるいはじめた。


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