月曜日の販促会議 : MIHARUアラウンド(転換期)

月曜日の販促会議

11月になった。
ここ最近薄曇りの天候が続いている。
辺りの鬱蒼とした空気を払うように、美春はヒョウ柄のラップドレスの上に緑のカーディガンという服装で会社に出勤した。

月曜日は恒例の販売促進会議だ。
業績の悪い『ナチュラリスト』に明るい話題は少ない。
せめて服装はポジティブにいこう!
美春は敢えて自分に喝をいれるためにヒョウ柄のラップドレスを選んだのだった。

「今日の販促会議気が重いよね」
昼休みの休憩時間、美春の隣の席に座るMDの西条が話しかけてきた。
アシスタントMDの美春の立場から見れば、西条はいちおう直属の上司ということになるが、実際の仕事内容は同じ業務に携わっている。
美春と西条の立場の違いは、最終決定権があるかないか、ただそれだけの違いだった。

小柄な西条は、商品企画の天野のほど、いかにもアパレル!といった切れの良さはないが、それでもやはり充分お洒落だ。
今日のボーダーカットソーに白いペチコートのお洒落もかわいい。
何よりも人柄が魅力的だった。
まるっこくて朗らかな性格の西条は、周囲の人をほっとさせる癒し力がある。
肩の力の抜けた自然体で柔らかく人を引っ張っていく。
そんな西条の性格はどこか麻生の性格に通じるものがあるので、おのずと美春も働きやすかった。

「各店の期末報告見た?10月の売上惨敗だったよねー」
商品企画の天野が泣きまねをしながらふたりのそばに近寄ってきた。
「企画部で出してるオリジナル商品は数字良かったんだよ…でも買付部門が…」
3人は”ふう”と溜息を落とした。
「数字は連帯責任だからねえ」
西条がこぼした。
話題を明るくするために美春は矛先を変えた。
「新宿店の本沢るり、先月の販促会議のあと数字上げてきましたねえ、追い詰められて気を吐いたって感じですね!」
「たしかにそう思った!よっぽど悔しかったんだろうなって感じた!」
天野が相槌をうった。
「でもさあ…それ言っちゃうと、売上悪いの自分の買い付けのせいじゃないって瀬戸バイヤーが勘違いしそうじゃない?」
西条の言葉に3人はまたまた”ふう”とため息を落とした。

瀬戸がフロアにいないので、先ほどから3人はのびのびと愚痴をこぼせているのであった。
他の社員も昼休みなので席を外している。

時計が1時を指し、昼休みの終わりを告げるベルがなった。
さあ戦々恐々の販売促進会議の始まりだ。

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