天然石のアクセサリー : MIHARUアラウンド(転換期)

天然石のアクセサリー

黒のニットワンピースを今日の天野は着用している。

ゆったりとしたシルエットのそのワンピースは、大きなふたつのポケットがアクセントになっていた。
少しだけひざ上の着丈なので、ジーンスと重ね着したりペチコートを裾から覗かせたりと、着こなしもいろいろとアレンジできそうだ。
大きく開いた襟ぐりに、天野は大判のストールをあしらっていた。

「天野さん、今日着てるそのワンピース、もしかして今回企画した商品?」
美春は目ざとくそのニットワンピースに目を留めた。
「そうだよ今回の企画、このワンピースがなかなか人気なのよ」
天野も指でVサインを作った。

「そのワンピースほしいっ!社販してっ!」
「いいよ、黒の他に赤とベージュとグレーがあるけど」
美春は頭を悩ませる。
「ううーん、大人買いでベージュと赤2枚買ってもいいですか?」
「全然いいよー、そんなに気に入ってくれるとうれしいよ」

仕事柄か、美春と天野の会話はいつも自然と身に着けているものの話しになってしまう。
「片桐さんが着けてる天然石アクセサリー、いつにもまして素敵だね、それも自分で作ったの?」
美春の着けているアクセサリーにすかさず天野も関心を示した。

「ふふふ素敵でしょーこのネックレス、でも残念ながらわたしのデザインではないんです」
美春はネックレスを外して、天野に直接手渡した。
グレーのバロックパールとルチルクォーツが絶妙に配された、とても洗練されたデザインだ。
「作ったのはわたしです、でもデザインしたのは別の人です」
天野は手渡されたネックレスを黒のワンピースの上に当ててみた。
たしかに、いつもの片桐さんのテイストより少し辛口だね、だれがデザインしたの?」
「この人がデザインしました」美春はパソコンのWEB画面を指差した。

「”ヒビキナツコ”…」天野は画面の文字を読んだ。
「そうなんです、響ナツコさんのデザインなんです、わたし最近この人の作品にはまってるんですよね」
「ネットで販売してる製作キットを購入して作ったのがこのネックレスです」
天野は再度ネックレスに目をやりながら、響ナツコのWEB画面に視線を戻した。
「製作キットのアクセサリーっていうと、どうしてもチープなイメージがあるけど…」
「この人のキットは本物のジュエリーの域に達してるね」
天野が賛辞を述べたことで美春の目が輝いた。

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