チャンス到来! : MIHARUアラウンド(転換期)

チャンス到来!

「片桐くんは小物関係の業者さんには精通してる?」
「はいショップ時代からの卸業者も知っています、やろうと思えば自分で企画もできると思います」
「では、西条くんと片桐くんふたりで相談しながら企画から納期まで管理して」
美春と西条は目を見あわせた。
秋山は天野のほうに振り返った。
「オリジナル衣料のほうの企画と納期管理は天野くんに任せたよ、西条くんと片桐くんとうまく相談して」
「3週間で仕上げて11月中旬にはショップに搬入できること、時は一刻を争うので」
「では早速今日から取りかかって」

美春も天野も西条も全く予期せぬ展開のもと、販売促進会議は終了した。
秋山と岡、そして瀬戸ががいなくなった会議室に3人はまだ残っている。

「瀬戸バイヤー抜きで、自分たちだけの権限で仕事を任せてもらえたのって2年間で初めてじゃないですか?」
美春は西条と天野に同意を求めた。
「いつも秋山商品部長がMDに意見を挟んだり、瀬戸さんが最終的に勝手に決めちゃたり、っていう納得いかない展開がほとんどだったもんね」
西条が美春の感想にうんうんと頭をふった。
「俄然テンションあがるよね、みんなで2週間がんばってクリスマス商戦の数字作ろうね!」
天野はやる気に燃えていた。

販売促進会議が終わると、美春、西条、天野は早速その日から3週間の納期にむけて行動を開始した。
『ナチュラリスト』各店にメールを一括送信して、ショップの要望を募っていく。
それと同時に商品案を立ち上げ、打ち合わせを開始する。
3週間はあっという間だ。
てきぱきと処理しなければとても納期に間に合わない。
会社のベルが退社時刻を知らせたが、当然定時に退社できるわけなどなかった。

そんな美春たちを尻目に「お先に失礼します」と瀬戸が30分ほどの残業のあとフロアを去った。
瀬戸の背中には、初めて蚊帳の外に置かれれた苛立ちが滲みでていたが、美春たちに瀬戸の顔色をうかがう余裕はなかった。
とにかく企画を立ち上げ納期に間に合わせなければならない。

― これはチャンスだ ―

2年間で初めて与えられた自分たちだけの権限、実績を残せば『ナチュラリスト』での今後の仕事に夢がもてるかもしれない。

でも、そんなことよりも何よりも結局3人そろってが根っから洋服が、この仕事が好きなのだ。
やりがいに燃えて時がたつのを忘れながら、美春たちは仕事に没頭した。
この2年間で一番充実した時間だった。

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