麻生の過去
「お代わりちょうだいっ!」
リビングに戻ると美春は麻生にシャンパングラスを傾けた。
「はいはい…」
そう言いながらも麻生は美春のグラスになみなみとシャンパンを注いでくれた。
「インテリアとか洋服とかに全然興味ないんだね、クローゼットもがらがらだったもん」
麻生は料理の手を休めず美春に返事をした。
「家は住めればいいし、服は着れればいいし、テレビは映ればいい、酒だけは別だけど…」
”酒だけは別”最後のセリフに美春は笑った。
「もー、わたしの家なんて靴とか服だらけだよ!この家をわたしの倉庫にしたいくらい!」
ふと気づいて美春は麻生にたずねた。
「4部屋もあるけど賃貸なの?」
麻生はビーフシチューの味を確認している「いや分譲マンション、5年前に購入した」
「えーっすごい」美春は本当に驚いた。
「でもさあ、ひとりにこの間取りはもったいないよねえ…」
麻生はしばらく沈黙した。
「あれ、この沈黙なあに?」
美春がきょとんとしてたずねると「この家を購入した時にはひとりじゃなかったから」と麻生がつぶやいた。
「ええっ…それはつまり」
美春の戸惑いを遮るように麻生が言葉を繋いだ。
「つまり2年前離婚した」
「ああそう…あーびっくりした…」
美春は一瞬絶句して”お代わり”と麻生にグラスをむけた。
「別に隠すつもりもなかったんだけど、特に伝えるタイミングもなかったから」
気まずさから、麻生もシャンパンを一気に飲みほし、シチューをむやみにぐるぐるとかき混ぜた。
美春は麻生の後ろ姿を眺めながら、少しの間いろいろと考えた。
そして麻生の背中を”ばしっ”と叩いて言った。
「別に離婚歴あっても気にしないよ、”結婚してる実は”ってほうがよっぽど困るもん」
「39年も生きてれば、離婚歴のひとつやふたつあるよ」
美春の言葉に麻生は少しリラックスした表情を浮かべた。
肩の荷が降りて景気づいたのか「ボジョレーはいりまーす!」と、コルクを勢い良く抜いている。
テーブルに麻生の手料理が並ぶ前に、1本目のシャンパンボトルはすっかり空になってしまった。
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リビングに戻ると美春は麻生にシャンパングラスを傾けた。
「はいはい…」
そう言いながらも麻生は美春のグラスになみなみとシャンパンを注いでくれた。
「インテリアとか洋服とかに全然興味ないんだね、クローゼットもがらがらだったもん」
麻生は料理の手を休めず美春に返事をした。
「家は住めればいいし、服は着れればいいし、テレビは映ればいい、酒だけは別だけど…」
”酒だけは別”最後のセリフに美春は笑った。
「もー、わたしの家なんて靴とか服だらけだよ!この家をわたしの倉庫にしたいくらい!」
ふと気づいて美春は麻生にたずねた。
「4部屋もあるけど賃貸なの?」
麻生はビーフシチューの味を確認している「いや分譲マンション、5年前に購入した」
「えーっすごい」美春は本当に驚いた。
「でもさあ、ひとりにこの間取りはもったいないよねえ…」
麻生はしばらく沈黙した。
「あれ、この沈黙なあに?」
美春がきょとんとしてたずねると「この家を購入した時にはひとりじゃなかったから」と麻生がつぶやいた。
「ええっ…それはつまり」
美春の戸惑いを遮るように麻生が言葉を繋いだ。
「つまり2年前離婚した」
「ああそう…あーびっくりした…」
美春は一瞬絶句して”お代わり”と麻生にグラスをむけた。
「別に隠すつもりもなかったんだけど、特に伝えるタイミングもなかったから」
気まずさから、麻生もシャンパンを一気に飲みほし、シチューをむやみにぐるぐるとかき混ぜた。
美春は麻生の後ろ姿を眺めながら、少しの間いろいろと考えた。
そして麻生の背中を”ばしっ”と叩いて言った。
「別に離婚歴あっても気にしないよ、”結婚してる実は”ってほうがよっぽど困るもん」
「39年も生きてれば、離婚歴のひとつやふたつあるよ」
美春の言葉に麻生は少しリラックスした表情を浮かべた。
肩の荷が降りて景気づいたのか「ボジョレーはいりまーす!」と、コルクを勢い良く抜いている。
テーブルに麻生の手料理が並ぶ前に、1本目のシャンパンボトルはすっかり空になってしまった。
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