あとに残る気まずさ : MIHARUアラウンド

あとに残る気まずさ

”あれっ、わたしもしかして空気読めない発言しちゃった?”
こうなると秋山商品部長も迂闊に口が挟めない。
瀬戸と美春…蛇と蛙の睨み合いで一触即発の空気が生まれたその時…。

「今日の販促会議では他にも検討項目がたくさんありますから、次の議題に進行しましょう」
岡マネージャーのよく通る声が会議室全体に響きわたり、全社員が安堵の空気に包まれた。
やってしまった張本人の美春も内心ほっとしていた。
販促会議はその後2時間ほど続いたが、瀬戸と美春はその間一度も視線を合わせなかった。
社員みんな何事もなかったかのように振舞っていたが、気まずさの残る会議になってしまった。
…どうやって関係修復しようか…美春の心に新たな悩みが生まれた。


会議が終わり本社の廊下を歩いていると、本沢るりが美春の後を追いかけてきた。
「片桐さんっ!さっきは本当にすみませんでした!」
「助け船を出していただいて嬉しかったけれど…片桐さんに申し訳ない気持ちでいっぱいです…」
「片桐さん、今後瀬戸バイヤーとぎくしゃくしちゃいませんか…?」
二人は廊下の途中で立ち止まった。
窓から射す夕日の光が二人の後ろに黒く長い影を作っている。

本沢は心配そうに美春の顔を見つめている。
本沢を安心させるために美春はにっこり微笑んだ。
「大丈夫だと思うよ、だってお互い大人だもん、瀬戸さんもアラウンド30だしさ!」
「それにわたしも今回の買い付けはバランス悪いと思ってたし、言わなきゃ気がすまなかったもん」
ほっとした表情の本沢の耳元でおおぶりのピアスがきらきらと揺れた。
ゴールドにアメジストの石が施されたピアスは夕日の光に映えてとても綺麗だ。
「本沢さんのピアス素敵ー、あなたの雰囲気にすごく合ってる」
本沢もすかさず美春のネックレスを褒めた。
「片桐さんのサンゴのネックレスもかわいい、えー手作り!?すごーい!」
「アクセサリー小物とかもっとショップに充実させたいよねえ」

…などど美春と本沢が廊下で盛り上がっていると、背後から岡マネージャーが近づいてきた。

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