盛り上がる草むら居酒屋 : MIHARUアラウンド

盛り上がる草むら居酒屋

週末の金曜日というシチュエーションが2人の酒量に拍車をかけた。
社会人には明日の仕事というものがある。
これが平日ならば2人はおそらく仕事のことが気にかかり、どんちゃん騒ぎに発展することはまず考えられなかっただろう。

缶ビール7本はあっと言う間になくなった。
麻生もたいそうな酒豪だった。
「今何時?えーっ12時?まだまだ飲めるよおっ、麻生さんお願いだからコンビニで追加のお酒買ってきて!」
「ほんとかよー、まだ飲むのー!何買ってくればいいの?」
「”イケメン”と”ドンペリニョン”!!」
「そんな金ないよっ!だいたいコンビニはホストクラブじゃないから”イケメン”と”ドンペリニョン”は売ってないっちゅーの!」
「うるさーい!いいから買ってこーい!代金はわたしの色気で払う!」
「えっ色気…じゃあますます足りなくない?」
「なにっ?そこのアラフォーなんかいったか!?」

こんなくだらないやり取りをしながら結局美春と麻生は夜中の3時まで飲んだ。

麻生がコンビニから買ってきてくれた、安物のスパークリングワインもあっという間に空っぽになった。
美春は仕事の愚痴をこぼし、健史とのけんかのことをはなし、自分の年齢についての不安を語った。
麻生はずっと”うんうん”と話を聞いて頷いていた。
「女性は30代からが本領だ」と嘘でも励ましてくれた。
「その赤い靴かわいいねえ、高いの?」などと美春のお気に入りの靴を褒めたりしてくれた。
「この赤い靴を黒とか白の服に合わせるのはだれでもできるの!茶色のスカートに合わせたのがわたしのセンスなんだからね!」と美春はクルクルまわりながら踊った。
最後には「赤いくつーはいてたー女の子ー異人さんに連れられていっちゃったー」と歌いだす始末だった。

この即席の”草むら居酒屋”の幕引きは、美春の薄れる意識の中でフェイドアウトしていった…。

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