けじめ : MIHARUアラウンド

けじめ

沈黙を破り麻生がしゃべりだした。

「美春ちゃんと会って食事をしたり、まあ居心地は悪くはない…」
「…って思ってたんだけど…会うたびだんだん感情がはいっていく自分がわかる」
美春は息を殺して麻生の一言一句に聞き入った。
「おれはそんなに器用なタイプじゃないから、あせらなくていいけどそのうちやっぱり結論がほしい」

風がぴゅうぴゅうとなった。
美春はなんとか言葉を絞り出した。
「けじめがなくてごめん、健史にきちんと連絡しようと思ってた、ほんとにごめん」

麻生は美春をアパートの前まで送ってくれた。

「じゃあ日曜日、横浜高島屋のビーズ展よろしくね」
美春は敢えて明るくふるまう。
「了解、会場が女性だらけという気まずさに打ち勝てるように努力します」
そう麻生もおどけてみせる。
健史のことにはいっさい触れず、ふたりはその日その場で別れた。

アパートの部屋に戻り時計を見ると、10時半をまわったところだ。

美春はすぐさま寝巻きに着替え、ソファーに座るとひと息ついた。
そしておもむろにバッグから携帯電話を取り出した。
少し躊躇するけれど、きっと行動は早いほうがいいだろう。
健史との連絡が途絶えてから約1ヵ月が経過している、正直にいえば連絡すること自体が気まずい。
でも…麻生のいつもの優しい表情が脳裏に浮かぶ…裏切れない。
美春は健史に電話をかけた。

携帯電話が無機質に着信コールを繰り返す
その音が鳴り響く間中、美春の心は右往左往していた。

そんな美春の心も知らず、健史はなかなか電話に出ない。
10回ほど着信コールが鳴ると留守番電話に切り替わった。
「お久しぶり、美春です、話しがあるので会えませんか、また電話します」
美春は簡単なメッセージを残し電話を切った。
そしてすぐさま健史にメールを打ち始めた矢先、健史から折り返しの電話がかかってきた。
美春はメールを打つ手を止めて、あわてて電話に出た。

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